2012年9月29日土曜日

9/30聖歌隊 クレメンス・ノン・パパ:〈サンクトゥス〉(聖なるかな)

9/30の礼拝での聖歌隊の賛美は,

 クレメンス・ノン・パパ(1510/15頃-1555/56):〈サンクトゥス〉(聖なるかな)

というカノンです。

クレメンス・ノン・パパは本名をヤコブ(ス)・クレメンスまたはジャック・クレマンといいますが,当時のローマ教皇であるクレメンス7世(在1523-34)と区別するために「教皇でない(ノン・パパ)クレメンス」と呼ばれます。

ルネサンスの時期にヨーロッパ各地で活躍したいわゆる「フランドル楽派」の1人ですが,よくあるようなイタリアで活躍した記録がないために,その作風にイタリアの要素が反映されていない「北国訛り」と言われ,おおらかに歌うというよりは精緻に組み立てられています。
彼の影響はドイツ語圏に大きかったらしく,特にミュンヘンの宮廷でも活躍したラッスス(ラッソ)が影響を受けたと言われています。

幼少期のことは何もわかっていませんが,現在のオランダ南部のゼーラントのミデルビゥルフ出身かもと言われています。
1544年頃にベルギーのブリゥヘ(ブルージュ)の聖堂で活躍し,その後神聖ローマ帝国皇帝カール5世(在1519-56)の宮廷礼拝堂に仕え,その後は今のオランダのスヘルトーヘンボスやライデンでも活動したようです。

作品としては,15曲の替え歌(パロディ)ミサ曲(ラテン語),約230曲のモテット(ラテン語),80曲のシャンソン(フランス語)やオランダ語の歌があります。
特筆すべきはオランダの流行歌などにオランダ語訳の詩篇の歌詞を乗せた,159曲からなる3声の「詩篇歌集(Souterliedekens)」で,後にアントウェルペン(アントワープ)の有名な楽譜出版社であるスザートも出版しています。

さて,今回の〈サンクトゥス〉は,歌詞はミサ曲にあるものですが,元のイザヤ書にあるようにサンクトゥス(聖なるかな)を3回繰り返すだけのシンプルなものです(実際にはそれを3回繰り返して,3×3で三位一体をさらに強調する予定です)。

音楽としては,「かえるの歌」に見られるような,パートが追いかけて行くカノンです。
ルネサンス期のカノンは,一見簡単なようで,お互いのパートを聞いて不協和音の部分とそれを解決する協和音の部分を意識しながらしっかりハモるのは意外に難しく,音の上がり下がりをしっかり歌うためには案外体力も必要です。

ですので,ルネサンス期のカノンは,実はその時期のポリフォニー曲の良い練習にもなる曲だと思いますし,さすがにクレメンス・ノン・パパと感じる曲でもあります。

楽譜はネットにもありますが,この通りの速さや強弱で歌ってはいませんが,参考までにURLを記します。
http://www.cantatedomino.org/cd/index.shtml?35.txt

この曲を教会で練習していると,まるで天使たちが「聖なるかな」と色んなタイミングで歌い交わしている様に感じます。
願わくは明日の賛美もそのようにして主の栄光が満ちあふれるものとなりますように!(atake)